167ヶ国・484演題の世界最大規模の学会へ参加
欧州心臓病学会(ESC)が毎年開催する、ESC2025。循環器疾患領域で世界最大規模の学会についてのレポートです。学会は最先端の情報にいち早く触れることができ、ドクターとの密なコミュニケーションができる大変貴重な機会として位置付けています。
2025年8月29日から9月1日まで、スペイン・マドリードで開催された「ESC Congress 2025」は記念すべき75周年を迎え、「Global Health」をテーマに掲げています。167ヶ国から33,000名以上が集まり日本からは876名が参加し計484演題が世界へと発表。世界規模の歴史ある国際学会の存在感と重みを強く感じる場となりました。
広大な会場で、多くの参加者たちが、スマホにインストールしているESCアプリを見ながら注目セッション会場を探し、行き交う姿は、スケールの大きさを改めて実感しました。日本人ドクターの参加も多く、現地で情報交換の場面が多数見られ、海外学会ならではの表情や雰囲気を体感できました。


投与期間が12ヶ月から3ヶ月へ
医師たちの強い関心が集まった
「DUAL-ACS Trial」
最も印象に残った演題のひとつが「DUAL-ACS Trial」です。二重抗血小板療法(DAPT)の至適期間をめぐる研究で、12か月投与が標準とされる現行の治療方針に対し、3か月投与の有効性が議論されました。結果は統計的に有意ではなかったものの、短期投与が死亡率や出血リスクの低減に寄与する傾向が示されました。現場の医師たちも強い関心を寄せ、ガイドライン改訂の可能性について活発に意見交換していました。

現場導入に慎重な判断が必要とされた
「NEO-MINDSET Trial」
もうひとつ注目したのが「NEO-MINDSET Trial」です。PCI後のACS患者に対し、従来の12か月間DAPTからアスピリンを早期に中止し、P2Y12阻害薬単剤療法に切り替える戦略を検証した研究です。結果として、出血抑制のメリットは見られたものの、虚血イベントにおいて非劣性が証明されず、現場導入には慎重な判断が必要とされました。
この発表は、今後の臨床現場における治療選択肢の幅を考える上で大きな意味を持つものでした。

医師が何を重視しているか
直接肌で感じることができた
会期中には5つの新ガイドラインが発表され、40件以上のHot Lineセッションがありました。日々の診療を左右する最新データを直接学べる場であり、学会参加者の真剣な眼差しが印象的でした。特に、新薬の臨床試験発表や既存薬の大規模臨床試験による結果がガイドラインに反映される過程をリアルタイムで追体験できたことは、医師が何を重視しているのかを直接肌で感じられたことは、単なる知識の習得にとどまらず、会話や提案の切り口を広げる貴重な気づきとなりました。
また、多くの展示ブースでは医師が製品や革新的な技術、研究データについて率直にメーカーと意見を交換する姿が見られ、現場の生の声を聞くことができました。


世界中の医療従事者と
同じ空間で議論を共有できた
海外学会参加を通じて感じたのは、業務の性質が大きく異なるということです。海外では想定外を想定しておく事前準備が必要不可欠であり即時対応力が試される機会が多い事から達成感はまた格別なものなります。特に海外は土地感ないところに足を運ぶことが多く、円滑に物事を進めるには高度なコーディネート力が必要になります。経験値の少ない社員は、先輩社員からのフォローも受けながら段取りを進めるようにしています。
総じて、ESC2025への参加は私たちにとって大きな学びと成長の機会でした。医学の最前線を体感し、世界中の医療従事者と同じ空間で議論を共有できたことは、この先のキャリアにとっても大きな財産です。
また、メディカルカンパニーの一員として、多様化する昨今、視野の拡大によるそれぞれの領域に対しても専門性を持ったパートナーとして最新知見の学習はもちろんしっかりアウトプットすることの重要性を再認識しました。今回得た知見と経験を、参加者だけにとどまらず、所属する拠点全員に共有し、今後の業務にさらなる価値提供につなげていきたいと思います。
 
							 
						

 
										